くという話ですけれども、その一方で、私が取材した中では、世界に冠たる安全システムと言われた東海道新幹線でも作業の事故がありましたし、そういった面では、このシステムが高度化していくのは結構なんですが、それに伴う人間の存在といったものが、大事になってくるのではないかという感じがしているのです。泉さんはその点、どのようにお感じになっておられすか。

泉 いまご指摘ありましたように、技術だけで考えずに、広く環境全体の問題として考えるということ、その環境の中には、もちろん人間自身のトレーニングとか責任感とかが不可欠だと思います。飛行機のパイロットに一番適した人間はという心理調査があるのですけれども、それは機敏だとか、目がよいとか、運動神経がいいということではないのですね。航空輸送という全体のシステムの中で自分がどういうポジションを占めているのかということの理解度の深い人がいいパイロットになるのですね。そういう全体から見る視点が必要だろうと思います。
例えば船の高速化に対しましても、海面に浮遊物があると危険です。時速百キロで大きな物にぶつかると、船もダメージを受けますから、そういう意味では海そのものをクリーンにするということと高速化の技術は不可欠、一体の技術です。
そういうふうに技術というものを広く見ていただきたい。そうしますと海の利用は、まだまだたくさんあるでしょう。私はデザイナーですが、デザイナーというのはアイデア勝負、コンセプト勝負なんですね。技術者の方は細かい技術が不可欠ですけれども……。いま世界にありますいくつかの面白い技術を紹介しますと、一つは、海面十メートルから数十メートルを飛ぶものすごい大きい飛行艇です。これは太平洋で使うと考えられているのですが、海に降りますといろいろ問題がありますので、低空を着陸寸前の姿勢でずっと時速五百キロぐらいまでで日米間を往復しようかというもので、これなんか海の一つの使い方です。
それから潜水泳法で明らかなように、水の中に潜ると抵抗が減るのですね。専門的には造波抵抗が減るのです。そうすると貨物船もタンカーも全部潜水艦にして自動走航で、GPS(全地球測位システム)で自分の位置を確認しながら自動的に行ってしまったらどうだろう、というのもあります。
私が特に海を利用した技術として注目したいのは災害時の技術です。今回の不幸な阪神・淡路大震災でも明らかになりましたが、陸が使えなくなったときに海がいか
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